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2025年9月30日

トラックドライバーの残業時間の実態と働き方改革|現場で求められる労働環境改善の方向性

トラックドライバーは、物流を支える重要な仕事でありながら「長時間労働」というイメージが根強くあります。実際、荷物の積み降ろしや交通渋滞、荷待ち時間などにより労働時間が長引き、残業が常態化しているケースも少なくありません。

近年では「2024年問題」と呼ばれる働き方改革関連法の施行により、ドライバーの残業時間が規制され、業界全体で労働時間削減と収入確保の両立が大きな課題となっています。

この記事では、トラックドライバーの残業時間の実態、残業が増える原因、働き方改革による影響、残業を減らすための取り組み、そして今後の展望について詳しく解説します。

トラックドライバーの残業時間の実態

厚生労働省の調査や業界団体の統計によると、トラックドライバーの平均的な労働時間は月200〜250時間程度とされており、残業時間に換算すると月40〜80時間程度に及ぶケースが多いといわれています。

ただし、これはあくまで平均であり、勤務形態や輸送内容によって大きな差があります。

地場配送(短距離)を担当するドライバーは比較的労働時間が安定しやすいものの、繁忙期には残業が増える傾向があります。
長距離輸送を担当するドライバーは、拘束時間が長くなるため残業時間も長くなりがちです。特に夜間走行や地方間の配送では、労働時間が過密になることも珍しくありません。

残業が増える主な原因

トラックドライバーの残業時間が多くなる背景には、いくつかの要因があります。

第一に、荷待ち時間です。納品先での順番待ちや検品に時間がかかり、その分労働時間が延びることがあります。特に食品や建材などの配送では荷待ちが頻発します。

第二に、交通事情です。渋滞や事故による遅延はドライバーの責任ではありませんが、結果的に労働時間が延長されてしまいます。

第三に、積み下ろし作業です。配送先によってはドライバー自身が荷役作業を行う必要があり、これが残業増加の要因になります。

第四に、無理な運行スケジュールです。会社や荷主が設定する納期に合わせるため、長距離や深夜の連続運転が発生し、残業時間が膨らむケースがあります。

法律上の規制と2024年問題

これまでトラックドライバーは労働基準法の「自動車運転者の労働時間等の改善基準告示」に基づく特例により、時間外労働時間の上限が曖昧でした。そのため、他業種に比べて長時間労働が許容されてきた側面があります。

しかし、2024年4月からは働き方改革関連法により、時間外労働の上限が**年間960時間(月平均80時間)**に制限されます。これはドライバーにとって労働環境改善の一歩ですが、同時に走行距離や稼働時間が減ることで収入が減少する可能性も懸念されています。

この「労働時間の短縮」と「収入確保」の両立こそが、2024年問題の核心です。

残業時間削減に向けた取り組み

残業時間を削減するために、業界全体でさまざまな取り組みが始まっています。

まず、荷待ち時間の削減です。荷主と協力して予約システムを導入したり、配送時間を分散させる取り組みが進められています。

次に、積み下ろし作業の効率化です。ドライバーが荷役を行わず、専門スタッフが対応する仕組みを導入する企業も増えています。

さらに、デジタル技術の活用も効果的です。運行管理システムやAIによる最適ルート検索により、無駄な走行や待機を減らす工夫が行われています。

また、物流業界全体で共同配送や積載効率の改善を進めることで、1人あたりの負担を軽減する試みも広がっています。

ドライバー自身ができる工夫

残業削減は会社や業界の取り組みだけでなく、ドライバー個人の意識や工夫も重要です。

時間管理を意識し、休憩や待機時間を有効に使うことは残業削減につながります。また、安全運転を徹底することで事故やトラブルを避け、余計な労働時間を発生させないことも大切です。

さらに、会社に改善点を提案することも効果的です。現場の声は労働環境を変える力となり、結果的に自身の働きやすさにもつながります。

残業時間削減がもたらす影響

残業時間の削減は、ドライバーの健康面や生活の質に大きなメリットをもたらします。長時間労働による過労や事故のリスクが減り、家族との時間や趣味の時間を持てるようになります。

一方で、労働時間が減ることにより収入が下がる可能性があり、ここをどう解決するかが今後の課題です。企業としては給与体系の見直しや手当の新設など、働きやすさと収入の両立を実現する工夫が求められます。

今後の展望

今後の物流業界では、残業時間削減を前提とした働き方改革が一層進んでいくと考えられます。デジタル化や効率化の推進により、無駄な時間を減らしつつ生産性を高めることが求められます。

また、企業がドライバーを「使い捨ての労働力」ではなく「企業の資産」と捉え、働きやすい環境を整える流れは加速するでしょう。

まとめ:トラックドライバーの残業時間は改善の転換期にある

トラックドライバーの残業時間は、月40〜80時間程度が一般的であり、長時間労働が課題となってきました。しかし、2024年問題をきっかけに労働時間の上限規制が導入され、改善の転換期を迎えています。

残業削減は健康や生活の質を高めるメリットがある一方で、収入減少という新たな課題も生じます。今後は業界全体で効率化や給与体系の見直しを進め、ドライバーが安心して働ける環境を整えることが不可欠です。

トラックドライバーの残業時間は、これから大きく変わっていく可能性があります。安心して働き続けられる職場環境を実現するために、業界・企業・ドライバーが一体となった取り組みが求められているのです。